原子核には核スピンがあり、これがゼロではない水素や炭素原子は強い磁場の中に置かれると、二つのエネルギー状態に分かれることが知られています。このエネルギー差に相当する電磁波を当てると、共鳴現象が起きて電磁波が吸収されます。その振動数は、原子核の種類と磁場の強さで決まりますが、原子核の周りの電子の状態に影響されるので、このデータを解析することによって、周辺の電子の分布や原子の結合状態を推定することができ、分子構造の決定手段として利用されています。近年病気の診断に役立っているMRI(磁気共鳴造影法)は、この原理を利用しています。
NMR装置は、有機化合物や生体高分子等の構造や性質を調べるために広く使われている分析装置のひとつです。特にNMRを使った分析は、溶液という生体と同じ生理的な条件でタンパク質の動的な高次構造や分子間相互作用の解析を行えるという特徴があります。このため、ポストゲノム研究として注目されるタンパク質の立体構造解析でX線結晶構造解析と並び有効な方法となっています。